ハートのパズル

ひとりの保険医として、保険診療のメリット・デメリットは良く知っているつもりです。今回のできごとは、日本の医療システムの問題だと思いますから、個々のお医者さんの批判ではありません。それをご理解のうえ、お読みいただければ幸いです。

内容は、身内の病気の話。

長女が、お正月明けから、熱が出て、咳が出て、

市販の小児用風邪薬を飲ませましたが、翌日、翌々日と、就寝中の咳が悪化してきたので、近所の小児科を受診しました。

1件目、街の小児科診療所

診察後、街のお医者さんは、

「今は咳が出ていないようだし、薬もいらないと思いますよ」

とのこと。そのまま帰されそうになったので、妻は、

「寝てるときの咳がかなり辛そうなので、お薬だけいただけるとありがたいのですが…」

薬は必要ないとするお医者さんに意見して、咳を抑えるお薬を処方してもらいました。

2件目、大学病院の小児科

お薬を飲み続けても良くなるどころか、咳も体調も悪化しているようなので、どこの小児科に行ったら良いかわからず、大きな病院に問い合わせてみました。

「近所の診療所でお薬をもらったのだけど良くならないので、インフルエンザも流行っているから、診ていただきたいのですが?」

大学病院の回答は、

「咳などの症状が出ているときは、インフルエンザの可能性は低いと思います。近所の先生が大丈夫というなら、もう少しお家で様子を見て下さい」

残念ながら、診察拒否でした。

大学病院のシステムや、忙しさは良く知っていますから、咳と発熱程度の問い合わせでは、診察拒否は仕方ない、むしろ大学病院の立場なら正しい判断か…。路頭に迷い、大学病院を頼りにしてしまったこちらが悪かった…。

最初の医院で処方してもらったお薬を飲み続けましたが、発病から10日が経っても咳は悪化、喉の深いところから咳が出ているよう、咳で夜は眠れず、熱も引かず、食欲は落ち続け、昼間もずっと床に転がっていて口数が減り、時々遠くを見るようなうつろな目。長女に病気と闘うだけの体力が不足してきているようで、心配になってきました。

3件目、紹介してもらった少し離れた街の診療所

最初の先生は、病気の検査やお薬の処方に消極的だったので、その先生の考えをひっくり返してまで検査を依頼するのは、患者として大変にエネルギーを使うものです。大学病院は、咳と発熱では相手にしてもらえない。

やはり、患者の意見をくみ取って、きちんと検査してくれる先生が必要だと言うことで、親戚から紹介してもらいました。

その先生を訪ね、検査していただいた結果、

  • 「インフルエンザ」陽性
  • 「溶連菌」陽性
  • 「気管支炎」

との診断。なるほど、咳止めじゃ治らないはずだ…。

およそ2週間続いた病状も、病気に対する正しいお薬を飲むことで、2日目には食欲が戻り、夜も眠れるようになりました。その後は、今までのぐったりがウソのように、どんどん元気に。

医療を理解し、患者の思いに寄り添ってくれる先生はありがたい

今回は、病気の回復まで遠回りをする結果となり、娘には辛い思いをさせてしまいましたが、最終的にはハッピーエンドで終わりました。

診断してくださったお医者さんに感謝、面倒くさがらずきちんと検査してくれたことに感謝、お薬を作っている製薬会社の方に感謝、病気の研究をしている方々に感謝です。

また、今回の件で、改めて患者の立場から日本独自の医療システムに触れることになり、自分の診療所を、さらに良くするための、大きなフィードバックを得ることができました。

巡り会う先生によって、本当に人生は変わるのだと、深く感じました。困ったらここに行けば大丈夫という安心感、信頼できる先生を知っているという安心感は、患者の立場からすると本当にありがたいものです。

当院を信頼して下さるみなさまには、歯科の分野において、私たちがそういう存在であり続けられるよう、毎日の勉強と診療を、頑張ってまいります!