究極の虫歯治療を追求する、世界規模の学会、タッカーアカデミー。
最後の話題は、自由時間の会話から。
海外の先生方は、日本の歯科事情にとても興味を持っており、参加する度にたくさんの質問を受けます。
海外で活躍する日本人も増えてきており、現地で歯科治療を受けることも多いようです。その時、現地の先生方は、日本で行われている治療の品質を目の当たりにして、必ず驚きます。残念ながら悪い意味で…。
日本は「トヨタ、キャノン、ソニー」素晴らしい精密製品を作る国民なのに、口の中には何故あんな雑な治療が入っているの?それで、本人は満足しているの?
今回、特に印象に残ったのは、大学で教鞭も執っている、オレゴン州ポートランドの開業医、
Dr. May Cheng からの質問。
「私の診療所に来る日本人は、詰めものの下に必ず虫歯が残っている、なぜなのか?」
返答に困りました。
日米の虫歯治療を良く知る私は、そのことをよく知っているので。
まず、日本には国民皆保険というシステムがあること説明し、ほとんどの歯医者がそのシステムで働いていることを説明しました。
その上で、保険を適用した場合、虫歯を1本治すのは、約25ドル位なんだと説明したところ、
May先生は、
「そんなに低い収入でどうやって生活していくの?」
私は答えました、
そのような診療費が設定されているから、1日何十人と患者さんを診ないと生きていけない。そのためには15分で治療を終えないといけない。
May先生もご存じの通り、そんな短時間で適切な治療はできないから、もちろん治療は長持ちせず、短期間で再治療が必要になる。そうやって、日本の多くの歯科医師は生計を立てている。
それから、歯医者が正しい知識を国民に与えないので、多くの人は、混んでいる歯医者ほど良い歯医者だと思っている。また、歯医者自身も、保険診療のシステムで自分が生きていくために、正しい歯科医療の追求を止めてしまっているかも知れない。
本来なら経過を追った方が良い歯も虫歯と診断して削らないと生活できないし、もし本当に虫歯の場合は、十分な治療時間を確保できず、虫歯の取り残しが頻繁に起こる。
そのような背景から、日本人の口の中には、詰めものの下に虫歯が残っているんだよ。と。
May先生は、
「可哀想な国民ね」
私は、
患者さんに本当に良い歯科治療を提供したいから、新規開業したんだと答え、
May先生からは、
「日本のために頑張ってね。私にできることがあれば、何でも言ってね」と、応援をいただきました。
May先生の診療所に来院した日本人が、偶然にそういう治療を全員が受けていたのでしょうか? 私は、そうは思いません。自分の経験を考慮しても、日本の平均的な歯科治療が、そのようなものであると、謙虚に認識しています。
しかし、日本の平均がそうであったとしても、私の知り合いには、少数ながら理想的な歯科治療を追求している先生方がいることも知っています。どうか、このブログを読まれた皆さまが、そのような歯科医師に出会えることを心より祈っています。
私自身も、平均的な歯科医師に落ちぶれないよう、継続した勉強と技術トレーニング、患者さんへの真摯な対応を継続したいと、改めて心に誓いました。今後とも、Shimizu Dental Clinicをよろしくお願いいたします。
院長
清水 雄一郎